「GPUってゲーム用のパーツでしょ?」 そんな認識を持つ人は少なくありません。
しかし、今やGPUはAI時代の“心臓部”として、世界中の企業や研究機関で活用されています。
この記事では、NVIDIAがどのようにしてゲーム用グラフィックチップのメーカーから、AI時代のインフラ企業へと進化したのかを、NVIDIA誕生の秘話や歴史・技術の両面から解説します。
✅ この記事で分かること
- NVIDIAの創業のきっかけ
- NVIDIAの歴史や技術革新と戦略的な転換点とは?
- GPUとCPUの違いは?なぜAIにはGPUが必要なのか?
🤫 NVIDIAの創業秘話
NVIDIAの創業は、1993年4月5日、カリフォルニア州サニーベルに住む若者が3人から始まっています。
しかし、その始まりは意外にもサンノゼ郊外のDenny’s(デニーズ)レストランでのコーヒーを飲みながら交わしていた会話からでした。

🍳 創業のきっかけは「ゲームとグラフィックスの未来」への確信
当時、3人はそれぞれSun MicrosystemsやLSI Logicなどの企業でグラフィックスや半導体の設計に携わっていました。
Denny’sでの会話の中で、「ゲームは最も計算負荷が高く、かつ市場規模が大きい」という着眼点から、GPU(Graphics Processing Unit)という新しいカテゴリのチップを開発する構想が生まれました。
三人でかき集めた創業資金はわずか40,000ドル。
その後、Sequoia Capitalなどから約2,000万ドルのベンチャー資金を調達し、事業を本格化させます。
🧠 創業者たちの背景と役割
三人ともエンジニアであることから、創業当時は工場を持たないファブレス企業として製造を外部に委託していました。
製造工場を持たなかったことで無駄な経費が抑えられ、開発に集中できたと思われます。
創業者 | 経歴 | 役割 |
---|---|---|
ジェンスン・フアン | LSI Logic出身、電気工学博士(スタンフォード大学) | CEOとしてビジョンと経営を牽引 |
クリス・マラコウスキー | Sun Microsystemsのエンジニア | 技術設計と開発の中核 |
カーティス・プリエム | IBMおよびSun Microsystemsでグラフィックチップ設計 | 初期の製品設計と技術戦略 |

📜 社名の由来と命名秘話
最初は「NVision」という社名を検討していましたが、すでにトイレットペーパー会社に商標登録されていたため断念。
最終的に「NVIDIA」という名前に決定。
これはラテン語の「invidia(羨望)」に由来し、「新しい視野(New Vision)」という意味も込められています。
🕰️ NVIDIAの歴史と転換点
1993年の創業から、ゲームGPUの先駆者としてスタートしたNVIDIAは、いまやAI時代のインフラ企業へと進化。
このセクションでは、時代ごとの主要な技術革新やビジネス戦略、そして時価総額の急成長など、NVIDIAが迎えた“転換点”を年表形式で振り返ります。
🕹️ 第1章:ゲームのためのGPUから始まったNVIDIAの物語(1993〜2005年)
創業当初はPCゲームのグラフィック性能向上を目的としたGPU開発に注力していました。
NVIDIAは1999年1月22日にNASDAQ(ナスダック)市場で上場を果たしました。
当時の公開価格は1株あたり12ドルで、創業から約6年後のことです。
このIPO(新規株式公開)によって、NVIDIAは資金調達と知名度の向上を実現し、以降のGPU市場での急成長とAI分野への進出の土台を築くことになりました。
この時代は、リアルな3D描画を求めるゲーマーのニーズに応え、NASDAQに上場することで資金を調達して急成長した時期です。
年 | 主な出来事 | 時価総額(概算) |
---|---|---|
1993 | NVIDIA創業 | – |
1995 | 初製品「NV1」発売 | – |
1997 | RIVA 128がヒット | – |
1999 | GeForce 256発表(世界初のGPU) NASDAQ市場で新規株式公開 | 約5.6億ドル |
GPUとは、簡単に言えば「絵を描くのが得意なチップ」。
ゲーム中のキャラや背景を、リアルな立体画像に表示させるのが仕事。
3D CADでも高精度の立体データを画面に表示させるにはNVIDIAのGPUが必要。
🔄 第2章:GPUがAIの計算エンジンへと進化(2006〜2015年)
CUDAの登場により、GPUはゲーム用途を超えて科学技術計算やAI研究に活用されるようになります。 この時期に、GPUが「並列処理の強み」を活かしてAI分野で注目され始めました。
年 | 主な出来事 | 時価総額(概算) |
---|---|---|
2006 | CUDA発表 | – |
2012 | AlexNetがNVIDIA GPUで学習 | – |
2013 | 安定成長期 | 約100億ドル |
2015 | AI研究者がGPUを個人用スーパーコンピュータとして活用 | – |
💡 CUDAとは?
GPUを“絵を描くだけのチップ”から“なんでも計算できるチップ”に変える魔法のツールです。
🚀 第3章:AIチップ企業への大転換(2016年〜現在)
NVIDIAはAI専用チップの開発を加速し、生成AIの爆発的な普及とともに市場の中心企業へと変貌し、RTXシリーズやTensor Coreなどの革新が、AI時代のインフラとしての地位を確立しました。
年 | 主な出来事 | 時価総額(概算) |
---|---|---|
2017 | AIブーム初期 | 約1,000億ドル |
2020 | データセンター需要拡大 | 約3,000億ドル |
2023 | ChatGPT登場/AI需要爆発 | 約1兆ドル |
2024 | Microsoft・Appleを超える | 約3兆ドル |
2025 | 世界初の時価総額4兆ドル企業に | 約4兆ドル |
製品ラインも「RTXシリーズ」「Hopper」「Blackwell」と進化し、今やNVIDIAは世界のAI計算の70%以上を担う企業になっています。
💡 Tensor Coreとは?
普通のGPUよりずっと速く、しかも省エネでAIの頭脳を支える“行列演算専用チップ”です。

👑 GPU vs CPU|AIにGPUが必要な理由とは?
GPU(Graphics Processing Unit)は、もともと画像や映像を高速に描画するための専用プロセッサです。
CPUが「頭脳」なら、GPUは「計算職人」であり、特にGPUは以下のような処理に強みがあります:
- 並列処理:数千個の小さなコアが同時に動いて、大量の計算を一気にこなす
- 行列演算:画像処理やAIで使われる数値の掛け算・足し算を高速に処理
- ピクセル描画:画面上の何百万もの点(ピクセル)をリアルタイムで描画
AIモデルの学習には膨大な行列演算が必要で、Tensor Coreが搭載されたGPUの並列処理性能が不可欠であり、「数学的ラザニア」を高速で処理できる唯一のチップです。
CPUとGPUの違いを理解することで、AI開発におけるハードウェア選定の戦略が明確になります
比較項目 | GPU | CPU |
---|---|---|
処理方式 | 並列処理(数千コア) | 逐次処理(数コア) |
得意分野 | 行列演算・AI学習 | 制御処理・軽量推論 |
AI適性 | 大規模モデルの学習・推論 | 小規模モデルや前処理 |
エネルギー効率 | 高い(1ワットあたりの性能が優秀) | 低い(大量演算には不向き) |
ChatGPTには高速なCPUでも処理が追いつかず、数千枚のGPUが必要になります。
ゲームの描画やAIの学習など「大量の同じ作業を速くこなす」のはGPUの得意技です。
なぜ NVIDIA はAI時代の覇者になれたのか?
NVIDIA の成功は、単なる技術力だけでなく、先見性・開発者支援・ブランド戦略の総合力によるものです。
AI市場が「ゼロビリオンドル」だった時代から投資を始めたその姿勢が、今の圧倒的な地位につながっています。
要因 | 解説 |
---|---|
先見性 | AIが「ゼロビリオンドル市場」だった時代から投資 |
技術力 | GPUをAI向けに最適化し、Tensor Coreなどを開発 |
エコシステム | CUDAやInceptionなど、開発者支援が充実 |
ブランド力 | 「AI=NVIDIA」というイメージを確立 |
💡 NVIDIAの強さは?
「GPUの性能」だけでなく、「GPUを使いたくなる環境」を作ったことにあり。
📚 まとめ|NVIDIA の進化は、テクノロジーの進化そのもの
1993年、ジェンスン・フアンら3人の創業者がカリフォルニアのDenny’sで語り合い、ゲームの未来を描く中でNVIDIAは誕生しました。
ゲームの高負荷グラフィックス処理というニッチに着目し、「GPU」という新ジャンルのチップを創り出すという構想は、創業当時としては革新的でした。
その後、GPUの特徴である、並列処理性能や、FP32/FP16などの浮動小数点演算の高速性がAI市場にマッチし、CPUに比べて処理速度とワットあたり性能が優れた省エネ効果で瞬く間に市場を席巻しました。
NVIDIAの成功は、単なる技術力だけでなく、先見性・開発者支援・ブランド戦略によるものです。
AI市場が「ゼロビリオンドル」だった時代から投資を始めたその姿勢が、今の圧倒的な地位につながっており、今後もまだまだこの勢いが続きそうです。
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