近年、再配達問題やライフスタイルの多様化を背景に注目されている「置き配」は、仕事や外出中でも荷物を受け取れる利便性や、対面での接触を嫌う方など多くの家庭で利用されています。
その一方で、荷物の盗難や紛失といったトラブルも増加しており、特に都市部や人通りの少ない地域に住んでいる方には利便性の反面、玄関先に置かれた荷物が持ち去られる心配も拭えません。
置き配は人手不足の宅配業者が再配達が少しでも軽減できる配達方法の一つですが、国土交通省は置き配を標準化して手渡しの場合は追加料金を徴収することを検討しています。
しかし、置き配が標準化された場合、万が一、大事な荷物が盗難に遭ったら宅配業者はどのように対応してくれるのでしょうか?
本記事では、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便といった主要な宅配業者ごとの対応や、Amazonや楽天の配送元による補償の有無、実際に被害に遭った際の対処法までをわかりやすく解説します。
安心して置き配を利用するためのヒントもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
置き配とは?
置き配とは、配達員が受取人と対面せずに指定場所に荷物を置いて配達完了とするサービスです。
コロナ禍以後、対面での接触を減らすために宅配便を玄関前や宅配ボックスなどに入れて受取人と直接荷物の受け渡しをしない方法です。
オートロックのないマンションや戸建てでも気軽に利用できる反面、盗難や破損のリスクもつきまといます。
📈 置き配が広まった背景
置き配が急速に広まり始めたのは2020年前後の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行をきっかけに、非接触での荷物受け取りニーズが急増したことが大きな要因です。
自宅にいながら他人との接触を避けられる点が評価され、Amazonをはじめとする多くのECサイトや宅配業者がこの方式を推奨・導入しました。
さらに、受取人不在による再配達問題も広がりの一因です。
働き方の多様化により自宅に居ない時間帯が増え、配達効率の低下や人手不足といった課題に直面していた宅配業界にとって、置き配は業務効率を上げる解決策のひとつとなりました。
メリットとデメリット
宅配業者にとっても置き配は、再配達件数の削減と配達効率の向上につながる重要な手段です。
実際にヤマト運輸や日本郵便などは、配達員の負担軽減や業務改善の一環として導入を進めてきましたが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
観点 | メリット | デメリット |
---|---|---|
👤 受取人 | 在宅・不在を問わず荷物が受け取れるため再配達の手間が省ける 忙しい時間帯でも配達を気にせず自由に行動できる 対面が不要なため感染症対策や防犯面で安心な場合も | 荷物が盗難や破損のリスクに晒されやすい 雨や風など天候による影響が心配 第三者に中身を知られる可能性がある(外箱のロゴなど) |
🧑💼 配送業者 | 再配達の削減により業務の効率化・人件費の抑制が可能 配達時間の自由度が増し、ルート最適化がしやすくなる 顧客満足度向上に寄与(「受け取れなかった」苦情の減少) | 配達後の盗難・誤配などに関するトラブル対応コストが発生 適切な置き場所が確保できない場合、配達の判断が難しい 責任範囲の不明確さによるクレームのリスク |
紛失や盗難に関する責任範囲の明確化は常に課題であり、写真記録の義務付けや置き場所の指定制度の整備など、トラブル防止の取り組みも進められています。
置き配標準化とは
物流業界では、人手不足や労働環境の悪化といった深刻な課題に直面しており、特に、2024年問題と呼ばれる物流の人材不足は、サービス維持に大きな影響を与えるとされています。
また、ネット通販の利用拡大に伴い、年間取扱個数は約50億個にも及び、配達業務の負担が増大しています。
そのため、効率的で持続可能な配送体制を整える必要性が高まっていることから、国土交通省は置き配を標準とする新ルールを検討しており、手渡しでの受け取りを希望する場合は追加料金を設定する動きが注目されています。
手渡し追加料金案
受取人にとっては手渡しの際に追加料金が発生するとなれば、消費者の負担が増える可能性が考えられます。
特に、高齢者や個別対応を求める人々にとっては不満や利用の不便さが増す懸念がある反面、置き配の普及により荷物の受け取りが簡便化され、多忙な現代人には新たな利便性を提供するという声もあります。
観点 | メリット | デメリット |
---|---|---|
👤 受取人 | 盗難や破損のリスクを回避 確実に対面受取したい場合の安心感 食品などの品質トラブルを回避 | 追加料金の負担 生活の自由度が低下 時間的・精神的コストが増える |
🧑💼 配送業者 | 誤配やクレームのリスクを軽減 品質トラブルを抑制 | 再配達の件数が増える 業務効率の低下(配達員の負担増) 費用対効果が薄い可能性 |
再配達削減が求められる理由
再配達に伴うコストは年間約2,000億円に達し、CO2排出量も年間約42万トンと試算されています。
再配達は環境負荷の増加に加え、配達員の労働時間を圧迫し、業務効率を低下させる要因にもなっています。
国土交通省は再配達率を6%に削減する目標を掲げていますが、2023年10月現在、約10%と達成には至っていません。
そのため、再配達の大幅な削減を目的に置き配を進めることで、物流全体のコスト削減やCO2排出量の削減が期待されます。
また、紛失や盗難を防ぐために写真記録の義務付けや置き場所の指定制度の整備など、トラブル防止の取り組みも進められています。
宅配業者ごとの対応比較
もし、宅配業者がリスクを減らして置き配した場合でも、万が一、大事な荷物が盗難などにより紛失してしまったらどうなるのでしょうか?
Amazonなどの配送元が置き配を指定している場合や、宅配業者によって以下のように対応が異なるようです。
ヤマト運輸(クロネコヤマト)
ヤマト運輸で置き配を希望する場合は「EASY」サービスを申し込む必要があります。
万が一、盗難にあった場合には以下の対応となるようです。
- 利用者が置き配を事前に指定した場合のみ対応。
- 配達完了の証拠として配達写真を提供。
- 盗難時の補償は基本的に対象外だが、配達員側の過失があれば対応されることも。
- 置き配を希望していないのに勝手に置かれた場合は、会社側の責任になる可能性あり。

佐川急便
佐川急便で置き配を希望する場合はWebから「指定場所配達に関する依頼書」を提出する必要があります。
万が一、盗難にあった場合には以下の対応となるようです。
- 発送元と契約している場合にのみ置き配を実施。
- 配達写真の記録あり。
- 盗難に関しては原則補償なし。ただし、誤配や無断置き配には対応する場合も。

日本郵便(ゆうパック)
日本郵便で置き配を希望する場合は「スマートクラブ」に加入する必要があります。
万が一、盗難にあった場合には以下の対応となるようです。
- 利用者が「指定場所配達依頼書」を提出することで置き配が可能。
- 補償制度はあるが、条件がやや複雑。配達員に過失がない場合、補償外のケースも。
- 高額品の配送時は置き配を避けるのが無難。

Amazon(Amazon配送サービス)
Amazonはデフォルトで置き配サービスに対応していますが、発送通知メールに「Amazonでお届けいたします」と表示されている注文が対応となります。
万が一、盗難にあった場合には以下の対応となるようです。
- 置き配対象の商品は、再送や返金などの柔軟な補償制度あり。
- 配達写真の確認が可能。
- 問題があればカスタマーサービスが迅速に対応。
万が一盗難に遭ったら?4つの対処法
不幸にも盗難に遭ってしまったら落ち着いて次の対応を取りましょう。
- 配送状況を確認(追跡番号や写真の確認)
- 配送業者に問い合わせ(配達状況・証拠の確認)
- 警察に被害届を提出
- 販売元・ショップに連絡し補償の可否を相談
まとめ
「置き配」は、私たちの生活をより柔軟かつ便利にしてくれる一方で、盗難という現実的なリスクとも向き合わなければならないサービスです。
ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便などの宅配業者は、Amazonなど配送元が置き配を指定している場合を除いて、受取人が置き配を希望する場合は各社の置き配サービスに申し込む必要があります。
受取人が置き配サービスに申し込んだうえで宅配業者に過失がない限り、置き配による配送完了後の荷物の盗難や紛失については基本的に宅配業者による補償はありません。
もし、荷物が盗難や紛失した場合は配送元が補償に依存し、対応は一様ではなようです。
事前にその違いを把握しておくことで、トラブルが起きた際の対応もスムーズになります。
盗難を減らすために防犯カメラの設置や宅配ボックスの活用や、近くのコンビニ・宅配ロッカーによる受け取りなど、リスクを減らす工夫も欠かせません。
便利さと安全性のバランスを取りながら、あなたのライフスタイルに合った最適な受け取り方法を見つけましょう。